今季、なでしこリーグの公式テーマソングとしてお馴染みとなった「One Day」。
夢に向かってプレーする選手たちの姿が浮かび上がるような歌詞と、アップテンポで爽やかなメロディーが印象的な一曲だ。歌っているのは、平均年齢19歳、のダンスボーカルグループ「ZILLION(ジリオン)」。 "9人9色"で、「全員主役」のコンセプトを体現する個性派集団だ。様々なバックグラウンドを持ち、多様性や女性活躍社会を目指すなでしこリーグと価値観を共有している。
「One Day」に込めた想いや、なでしこリーグの魅力とは?
個性が集まることで生まれる「強さ」や、グループとして大切にするべきこととは?
なでしこリーグの北澤豪理事とZILLIONの、熱い対談をお届けします。
(ライター:松原渓・文中敬称略)
なでしこリーグの魅力とは?
−−ZILLIONさんになでしこリーグのテーマソングを、オファーした理由を改めて教えてください。
北澤:最初にお話をした時(なでしこリーグが開幕した時)から時間が経ちましたが、改めてオファーが実現して嬉しく思います。ZILLIONは「全員主役」というコンセプトでそれぞれが個性を発揮しながら、リーダーがまとめていくところがなでしこリーグと共通しています。多様性や女性活躍のメッセージを発信しながら、男性メンバーも輝いているところが素敵ですね。我々なでしこリーグと一緒に進んで行ってくれることに感謝しています。
−−ZILLIONの皆さんは、なでしこリーグのどんなところに魅力を感じますか?
タイラ:「女性活躍」は社会の中でずっと言われてきたことですが、まだまだ目に見えるものはまだ少ないと感じています。だからこそ、「サッカーの試合で女性が生き生きとプレーしていることって、こんなに輝かしいことなんだ!」と目に見えてわかるところに魅力を感じています。
ワタル:チーム一丸となって勝利やリーグ優勝を目指すひたむきな気持ちが、プレーから伝わってきます!それは笑顔だけではなく、熱い表情でプレーしている時も感じることが多いです。
北澤:女性の真剣な表情ってすごく素敵ですよね。
−−北澤さんも、現役時代は「熱さ」が伝わるプレーヤーでした。
北澤:現役時代、「思い」をどう伝えるかということは、すごく大事にしていました。勝つか負けるかわからない中でやっているし、どんな結果も受け止めなければいけないのが勝負の世界だから。そういうことが人生を豊かにすると思うし、女性の場合、お子さんを持った時にはその感覚を伝えていくことができる。それは自分たち男性にはできないことだなと感じます。
−−なでしこリーグは多くの選手が仕事を持っています。「サッカーのために仕事も頑張る」という熱量や、ひたむきさも感じます。
北澤:そうですね。ヴェルディでプレーしていた頃に女子チームの(*)ベレーザと一緒にトレーニングをすることがあって、例えばウェイトトレーニングの時、自分は記録をコーチに任せて、「トレーニングをやって終わり」という感じでした。でも、(当時アマチュアだった)澤(穂希)さん(*)たちは、自分でノートをつけていて、、、。今思うと、その差は大きかったなと思います。
(*)現日テレ・東京ヴェルディベレーザ
(*)元なでしこジャパンの選手。オリンピック4大会、ワールドカップ5大会に出場し、2011年度FIFA 女子年間最優秀選手に選出された。
「One Day」にこめたメッセージ
−−ZILLIONの皆さんが「One Day」という曲に込めた想いや、ここを聴いてほしい!というポイントを教えてください。
ルナ:「日々努力して、願い続ければ夢はきっと叶う」「一人じゃなくて仲間がいるよ」という想いを込めた"ファイトソング"のつもりで歌っています。
カシン:僕は、ZILLIONに入るためのオーディションの実体験や、元々自分が抱えていた思いが歌詞と重なるので、歌う時に気持ちが入ります。サビのところで「君が隣にいるMiracle」という歌詞があるんですが、「One Day」は、もしかしたら出会っていなかったかもしれないメンバーとの物語でもあるので、気持ちをこめて歌っています。
北澤:実体験が曲になっているんですね。最初は曲のメロディーやテンポの良さが印象に残ったけど、聴けば聴くほど、歌詞が耳に残るようになって。サッカーで鳥肌が立つようなシーンや心に刺さるシーンが目に浮かんで、そのストーリーがアスリートの気持ちと重なっているなぁと思います。だから、試合前はもちろんだけど、負けた試合の後でも聴けるんじゃないかな?
途中でラップに変わるところが好きで、曲のテンポが切り替わって上がっていく感じがいいなと思っています。
カシン:あそこは、「試合が始まった!」というイメージです。
−−壁にぶつかったときに背中を押されるような歌詞も印象的です。ZILLIONのみなさんは、困難に直面した時はどのように乗り越えますか?
リオン:私たちはまず話し合いますね。ただ意見を言い合うのではなくて、聞き合うことを大切にしています。まずは全員が思っていることを発信して、話していない人には「どう思う?」と聞くようにしています。
ワタル:年下の子は言いづらいこともあると思うので、リーダーのリオンや年上のメンバーが「どう思う?」と意見を聞いて、それから全員でしっかり話し合おう、という感じです。
ヒロキ:主張するだけじゃなく、"受け入れる"目線のチームワークを大切にしています。「共存」、「共有」という価値観を大事にしていますね。それは僕らの世代だからかもしれません。
北澤:最年少(16歳)のルナさんは、サッカーにたとえるなら、U-16の選手が飛び級で一つ上のカテゴリーに入っている感じがします。自分の考えや思いは言いやすいですか?
ワタル:本音で言っていいからね?
ルナ:(笑)。私は口下手であまり伝えることが得意ではないし一番年下なので、最初は言いづらかったのですが......みんなと時間を重ねるにつれて言いやすくなりました。今では、お互いを受け入れ合える空間が本当にいいなと思っています。
北澤:それぞれの個性を生かしながら、世代間が融合することで出てくる強みもあると思います。その方針は、リーダー(リオン)の考え方?
タイラ:自然とそうなっていった気がします。
ケイジ:オーディションの頃からそうでした!最初はソロの審査だったのが、進むにつれてグループでの審査になり、みんなで話し合いの場を設けるようになって。僕は最年長(23歳)ですが、話が長くて口下手です(苦笑)。でも、みんなが話を聞いてくれる姿勢が本当にありがたいし、本音でぶつかり合っている感じがします。
北澤:ケイジは自分をよく理解しているね(笑)。「自分がどう思っているか」という考えをしっかり持っているからこそ、多様性や個性を尊重できると思います。人の意見を聞いたら自分の意見を言えなくなる場合だってあります。。人の意見を聞いてそこで「いい」とか「嫌だな」と思っているだけでは何も始まらなくて、主張があるから多様性として認め合うことができる。あとは、オープンマインドで聞く力や受け入れる姿勢がとても大事ですよね。全部聞いた上で「どれでいく?」と、選ぶことができるから。最後はリーダーが決めているの?
リオン:そうですね。決断する時は自分が「じゃあ、こうしよう!みんなはそれでいい?」と聞いて、まとめることが多いです。
北澤:本当に、サッカーチームみたいだね。
異なる個性が集まることで生まれる「強み」とは?
−−ZILLIONの皆さんは北から南まで出身地がみんな違いますね。すべて、Jリーグのクラブがある県です。
リオン:私は大阪出身ですが、お父さんと弟と一緒に試合を見ていたので、今回、なでしこリーグとタイアップのお話をいただいた時にはすぐに伝えたのですが、2人ともとても喜んでいました。
北澤:大阪はラテン系サッカーですね。やってナンボ!みたいな。サッカーには地域性が出ますからね。
リオン:そうです、そうです。
北澤:ZILLIONはこれだけ違った個性が集まることで、どのような強さが生まれていると思いますか?
ヒロキ:それぞれ、生まれも違えば一番大事にしていることも違うし、アイデンティティが違うからこそ、9通りの目線で物事を捉えることができて、可能性も9通りになります。その中で、自分たちで自分たちを俯瞰しながら進むことができる。だからこそ、中身も魅力も9倍にできると思います。
北澤:確かにそうですね。なでしこリーグも、多様性を大切にしていて、コンセプトがトロフィーに埋め込まれています。
ヒロキ:一つひとつ、違う形のメダルが合体してトロフィーになっているんですよね。「コンビビアル」(*)というコンセプトに感銘を受けました。
(*)ラテン語の convivere に由来し、con は「共に」、vivere は「生きる」、「共に生きる」を意味する。
北澤:よく知っているね!そういうことを意識している世代だから、自然とそういう知識が入ってくるでしょうね。これはもう、なでしこリーグの理事になってもらうしかないな(笑)。
一同:(笑)。
北澤:チームとしては個性を調和させる上で、出すぎなきゃいけない時もあるし、逆に出すぎるとデメリットが出ることもある。それは難しいところだけど、ZILLIONは、その辺のバランスをみんなが理解している感じがします。みんなはサッカーに例えると、どのポジションが適正だと思いますか?
ルナ:リオンは絶対にGKだと思います。いつも後ろからメンバーのことを考えているというか。
北澤:リーダーが後ろから守るイメージ?
リオン:私は「ついてこい!」というタイプではなくて、話し合いでも一歩後ろから全員を見るようにしているので、確かにGKかもしれませんね。
ヒロキ:リオンは多分、いざとなったら攻めにも出られると思う。状況に応じてMFにもなって、中立的な立場で役目を全うできるイメージですね。
北澤:GKがドリブルしてゴールまでいっちゃった!みたいな感じかな(笑)。ただ、GKって唯一全員を後ろから見ることができる。他のメンバーはクルクル回らないと全員が見えないけれど、GKは相手チームも全部見えているから、俯瞰的に考えられるよね。カシンは?
カシン:僕はどんな時もFWで点を取りたいですね。
北澤:攻められている時もあまり戻らないけど、その代わり、俺が点を取ってやるぜ、という感じ?
カシン:どちらかというとそういう感じですね。勝負師です(笑)。
北澤:ワタルはMFじゃない?
ワタル:そうですね。繋ぐ役割もしますが、たまにオウンゴールもしちゃいますけど(笑)。
リオン:ワタルは突破口にもなりますね。
北澤:オウンゴールは人生3回までだよ。(笑)
ワタル:気をつけます!
一同:(笑)
北澤:ケイジは?
ケイジ:話が下手くそなので...DFだと思います(笑)。ただ、たまにロングパスを出してチャンスを作りたいですね。
ヒロキ:ケイジは曲や歌詞も作っていて、バックパートもやっています。そういう意味では、出る時は出ていくタイプですね。
ワタル:そう、ケイジは大事な時に走ってくれるタイプです。
ヒロキ:僕はやっぱりMFですね。保守的だけど、攻める時は攻めたいし、常に冷静を保って俯瞰してみたい。
カオラ:私もケイジと一緒で、普段は後ろから見守るDFですね。でも、自分が活躍できる場ではしっかり貢献したいです。
モカ:私は...GKのもっと後ろというイメージかな?
カシン:それはないよ(笑)。モカは自分と一緒で、めっちゃFWだよ。
ケイジ:確かに、モカはガンガンいくというよりは冷静だけど、勝負師だよね。
タイラ:私は自分でどのポジションなのかわからないので、いつもみんなに助けてもらっていますね。
ワタル:タイラは毎回変わるかもしれないですね。ポジションがあるようでなくて、どこでもやれる。
タイラ:確かに、一つに定めたくないという気持ちはあるかもしれないですね。どこにでも行けるようにしたいです。
北澤:今、求められているのはどのポジションでもできるポリバレントな選手だからね。
ワタル:個性が一人ひとり違うので、どうしても一つにまとまることができずに、ぶつかることもあります。でも、お互いのいいところをリスペクトし合って最終的に大きなものにしたいと思っています。だから、話し合いの場で一人ひとりの意見を聞くことが大事ですよね。
北澤:お互いに頑張っている姿を見ているから、尊重し合えるだろうなと思いますね。
ヒロキ:そうですね。それぞれが強みとする分野で力を発揮できたらいいなと思っていて。たとえば、僕はZILLIONとして活動させていただく前はソロでタレント・モデル業などファッション業界で活動していたので、そこで培った財産をZILLIONに還元したいです。表現者として「やらされている感」が一番嫌ですし、僕たちらしい「個」を表現していく上では、ビジュアル一つにしてもこだわりを持つことがすごく大事だと思うので。それも話し合いながら作り上げていますね。
北澤:仲間から客観的な意見や専門的な意見をもらえるのはすごくいいですね。それによって、自信を持ってステージに立つことができるだろうし。
なでしこリーグ×ZILLIONの未来
−−改めて、北澤さんが感じるなでしこリーグの魅力や、「ここを見てほしい!」というポイントを教えてください。
北澤:女性や女の子たちがサッカーをやっている、という表面的なものだけではなくて、「それぞれのバックボーンや夢があった上でサッカーをやっている」という部分を見てもらえると、それぞれの選手のパフォーマンスをさらに楽しめるのではないかな、と思います。集団になると「みんな同じ」でないといけない感じがして、そうなってしまいがちだけど、「みんな違う」からこそいいんだと思います。時代が変わってきた中で、なでしこリーグの「みんな違っていいし、それぞれが自分を持っているからこそ尊重し合える」というところにはぜひ、注目してみてほしいです。
−−ZILLIONの皆さんも、改めてなでしこリーグに共感できる部分が増えたのではないですか?
ヒロキ:そうですね。僕は、個々がそれぞれのバックグラウンドを持ちながら、共通する「好き」や目指すところが同じ、というところで、なでしこリーグの皆さんと共鳴できるところがあるなと改めて思いました。
リオン:なでしこリーグの皆さんと同じように、私たちもそれぞれの得意分野があって、作詞作曲やファッションのお仕事をしているメンバーもいます。ZILLIONの活動をベースとしながら多方面で活躍している、という部分は共通していて、共感できるところだなと思いました。
カシン:なでしこリーグは練習時間がチームによってバラバラと聞きました。僕たちも環境はそれぞれですが、一つの目標に向かってやっているところはすごく共感できるし、応援しています。
−−北澤さんから今後、ZILLIONの皆さんに期待することを教えてください。
北澤:やっぱり、理事になってほしい(笑)。それは冗談ですが、表彰式など、いつか会場で歌ってもらいたいですね。ファンやサポーターもダンスを練習してみんなで踊るのも楽しそうだし、そこで一緒に盛り上げてほしいなと思います。なでしこリーグが発信していこうと思うことを体現しているので、広く世の中が理解してくれるきっかけになると思います。
一同:こちらこそ、よろしくお願いします!
−−それでは最後に、ZILLIONの皆さんからなでしこリーグのファンやサポーターの皆さんへ、メッセージをお願いします。
ヒロキ:僕たちは音楽活動をさせていただいていますが、なでしこリーグの選手の皆さんはサッカーを通じて、多くの人に勇気やパワーを与えていると思います。。そういうエンターテインメント性やスポーツマンシップ、プロ意識などは、ツールが違うだけで共通していると思います。次世代への強いメッセージを発信していく意味でも、なでしこリーグの皆さんと僕らZILLIONの活躍で相乗効果を生み出して貢献していけたらいいなと思っています。
ワタル:なでしこリーグのテーマソングを歌わせていただいて、僕たちも熱いものを感じて刺激を受けましたし、僕たちもその熱さを後押ししながら応援していきたいと思いました。
ルナ:これから、なでしこリーグさんと私たちZILLIONで、同じ目標を持ちながら一緒に頑張っていきたいなと思います。
リオン:このような素晴らしい機会をいただけて光栄です。こういう機会がなければ聞けないお話もたくさん聞くことができて、刺激的でした。これからも一緒に盛り上げていけたらなと思います。ありがとうございました!
■写真提供:J.LEAGUE
【プロフィール】
ZILLION
ジリオン/ソニーミュージック主催オーディション"ONE in a Billion"発、 応募総数5,000人以上の中から、約1年にわたる審査・トレーニングを経て勝ち抜いて結成された、 平均年齢19歳・男女混成の9人組次世代ダンスボーカルグループ。2021年12月22日、Digital Single「Timeless」でプレデビュー。6月1日には、「2022プレナスなでしこリーグ」テーマソングにも起用中の「One Day」を含む、『One Day EP』をリリース。
<ZILLION OFFICIAL SITE>
https://www.zillion-official.com
北澤豪
キタザワツヨシ/元サッカー日本代表。現在は、「日本サッカー協会」参与、「フットサル・ビーチサッカー」委員長、「日本障がい者サッカー連盟」会長、「日本女子サッカーリーグ」理事としてサッカーのさらなる発展・普及に向け活動を行っている。また、「国際協力機構」(JICA)サポーター、「国連UNHCR協会」国連難民サポーターとして社会貢献活動にも積極的に取り組み、サッカーを通じて世界の子ども達を支援できる環境作りを目指している。2022年、日本初のeスポーツ専門の高等学校 「eスポーツ高等学院」名誉学院長に就任。
【THE FIRST TIMESでのZILLION×北澤豪理事の対談記事はこちら】
https://www.thefirsttimes.jp/interview/0000141831/