「文房具を必要とする子どもたちに届けよう」
その呼びかけは2023年6月17日と7月1日のホームゲームに合わせて行われました。すると、使わなくなって家に眠っているたくさんの新品の文房具が、ファン・サポーターらによってホームゲームの会場に集まりました。その後、文房具はベトナムとの国境に近いスヴァイリエン州の3つの小学校とプノンペン近郊の工業団地近くの小学校に届けられています。朝日インテック・ラブリッジ名古屋は、なぜ、このような活動を行うことになったのでしょうか。
カンボジアに届けられた文房具とボール
朝日インテック・ラブリッジ名古屋の取締役として経営に参加する奥村雄介さんは再生資源の回収業を手がける会社を経営しています。近年はカンボジアにも進出し環境汚染など現地の社会問題を技術で解決するべくチャレンジを続けています。今度は朝日インテック・ラブリッジ名古屋として、女子サッカーチームの力を結集しカンボジアの貧しい地域の子どもたちに文房具を贈るSDGsプロジェクトを実施することになりました。女子サッカーチームにはたくさんの人が関わります。ホームゲームには多くのファン・サポーターが集まります。その力で、より良い支援をできると考えたのです。
ファン・サポーターが新品の文房具を持ち寄った
カンボジア国内に送るだけでは、貧しい地域の子どもたちに文房具が行き届かないかもしれません。「文房具を入手することができずに退学してしまう子どもたちを救いたい」「未来を拓きたい」その思いを胸に、朝日インテック・ラブリッジ名古屋のスタッフが現地に出向き、直接、子どもたちに文房具を届けることにしました。
黒柳美裕選手はホームゲームで文房具を集める際に、このチームだから得られるやりがいを感じました。
「自分がなでしこリーグでプレーしているからこそ貢献できる大きな活動でした。ファン・サポーターが私たちのS N Sの発信を見て活動を知り文房具を寄贈してくれたことに感謝しています。ファン・サポーターに直接お会いし、皆さんの思いやりを感じ、すごく温かな気持ちになりました」
笑顔の選手たち
2023年8月9日、文房具はカンボジアに運ばれました。現地に文房具を持参したスタッフの一人である北川みなもさんは、かつてなでしこリーグでプレーした元女子サッカー選手。訪問先の校長先生と会話し印象に残っていることがあります。
「学校自体に豊富なお金があるわけではないので支援はすごく助かるという言葉をいただきました。個人的には『子どもたちに日本語を教える先生になってほしい』と言われたのがすごく嬉しかったです。女の子たちが自分の周りに寄ってきてくれました」
市川実季選手は、この取り組みを通じて「日本で当たり前のことが当たり前ではない世界が自分の想像よりもたくさんある」と気づきました。
「この取り組みは、まだまだ小規模です。それでも続けていくことで地域をつなげ、朝日インテック・ラブリッジ名古屋は愛されるチームになっていくのだと思います」
カンボジアの子どもたちと朝日インテック・ラブリッジ名古屋のスタッフ
黒柳選手は、選手一人一人が現地の反応を発信していくことが大切だと考えています。そして「現地に出向いて交流してみたい」という思いが生まれました。先に現地の状況を知った北川さんも次の課題を見据えSDGsの活動を続けたいと考えています。
「寄贈していただいた人たちに、この活動の経過を知らせていくことが大切です。これからの活動によって、チームが地域の皆さんの役に立っていると実感することが増えてくると思います。一度限りではなくこの取り組みの継続実施を目指したいです」
21世紀に入ってからのカンボジア経済はアジアでも屈指の高成長を遂げてきました。しかし、1970年代から1990年代にかけて武力衝突や紛争が続き多くの貧困層が生まれた影響は今も密かに続いています。子どもたちが学力を身につけ、貧困から脱出することができれば、日本を含むアジア全体に新しい豊かな時代が訪れるはずです。
Text by 石井和裕