連載コラム

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2021年12月16日

日本全国なでしこリーグの街を訪ねて 静岡SSUアスレジーナ編

民間の調査機関・ブランド総合研究所が調査する「『スポーツのまち』として思い浮かぶ市町村ランキング」で、磐田市が初めて頂点に立ちました。磐田市出身ペアで卓球日本代表の水谷隼選手と伊藤美誠選手が東京2020大会の混合ダブルスで金メダル、二輪(オートバイ)の世界最高峰レースのmotoGPでは、市内に本社があるヤマハ発動機が通算5回の三冠(ライダー、コンストラクターズ、チーム)を達成しています。

ご存知の通り、磐田市はJリーグのジュビロ磐田のホームタウン。JAPAN RUGBY LEAGUE ONE(ジャパンラグビー リーグワン)の静岡ブルーレヴズも立ち上がりました。磐田市内のスポーツジム『ボンサイ柔術』所属のホベルト・サトシ・ソウザ選手とクレベル・コイケ選手はRIZINで活躍しています。

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ヤマハ発動機コミュニケーションプラザ

女子サッカーは、静岡SSUアスレジーナがなでしこリーグ2部で活躍。静岡産業大学女子サッカー部が第29回全日本大学女子サッカー選手権大会で準優勝しています。
今回は、静岡SSUアスレジーナのホームタウンで日本一の「スポーツのまち」磐田市を訪ねます。

スタジアムに行くことは趣味ではなくて「暮らし」
磐田市長 草地博昭さん

「いきなり本題に入りますが、磐田市には、せっかく静岡SSUアスレジーナがありますので、もっと認知度を高めていかないといけませんし、応援する市民を増やしていきたいと思っています。プレーしてくれる子どもたちも増やしていきたいです。加えて『磐田市に来れば女子サッカーをプレーできるよ』というのが磐田市の特徴になれば、市外にお住まいの方も磐田市に集まってくることになるので、僕が掲げる『安心できるまち、人が集まる磐田市に!』につながってくると思います」

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磐田市長 草地博昭さん (※撮影時にマスクを取りました。)

スマートな見た目からは想像できない熱を帯びて語り始めたのが磐田市長の草地博昭さんです。草地さんは小学校6年のときにJリーグが開幕。大ブームの中で思春期を過ごしました。
「市長選に当選したときに『趣味は何ですか』って聞かれました。『僕、あんまり趣味はないんですよ』と答えたら『市長、サッカーは見に行かないんですか?』と言われました。『サッカー?そりゃ見にいくよ』と言うと『それは趣味じゃないんですか?』と......それ趣味?そのとき『そうか、他のまちの人から見るとサッカー観戦は趣味になるのか』みたいなことを思いました。試合結果のニュースを見たり、スタジアムに行くことは趣味ではなくて『暮らし』じゃないですか?」

草地さんは、年に数度は静岡SSUアスレジーナの試合を観戦します。市長に当選する以前は、練習見学もしていました。
「サッカーに関して、僕は男子・女子に関わらず試合を見ています。女子の魅力......?男女の違いはないと思っていますね。女子という偏見があるとしたら、それはちゃんと見た方がいいですよね、サッカーとして。必ず魅力はあるはずというか、面白いところを探してこそサッカー好きだと思いますけどね。だって子どものサッカー見ていたって面白いですもんね、カテゴリーは関係ないと思うけどなぁ」
自然に目の前のサッカーを楽しむのが草地さんの流儀です。
草地さんのスポーツ行政の考え方も自然体です。「意識させないで当たり前に暮らしの中にスポーツがある環境を作っていくのが本来は一番良い」住民みんながスポーツを日常的に楽しみ、毎日を健康に生活できるようにしていきたいという考えです。実は、磐田市民は、あまり意識していないかもしれませんが、静岡県サッカー協会が作成した「静岡県内サッカー場リスト」によると、磐田市には10ヶ所のサッカー場があり、そのうち7ヶ所は天然芝のグラウンドです。このまちでは、いつの間にか芝生のグラウンドでサッカーをすることが当たり前になっていました。

草地さんは磐田市の南地区のご出身。静岡SSUアスレジーナのクラブハウスと練習グラウンド(静岡産業大学のグラウンド)も南地区にあります。
「静岡SSUアスレジーナの選手が朝のラジオ体操に来てくれて、地区の人は、みんな顔見知りでした。いつもは、あんなにふわふわしている子たちが試合になると真剣な顔でプレーしている。その姿を見ると『あぁ頑張っているなぁ』と応援したくなりますね」

選手が毎週末に参加し続ける「みんなでラジオ体操」
磐田市南交流センター センター長 吉添繁雄さん

草地さんが、市長に当選する以前から参加していたのが、2016年5月1日に始まった磐田市南交流センターで開催されている「みんなでラジオ体操」です。その第1回から現在に至るまで、静岡SSUアスレジーナの選手、スタッフは常に参加しています(新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、現在は休止中)。2017年9月30日には36人の選手、スタッフが参加。なでしこリーグ2部昇格を、地域の皆さんと一緒にお祝いしました。開催回数は、もうすぐ400回に達します。

磐田市南交流センターは磐田市の南地区の住民交流を促進する施設。「みんなでラジオ体操」を開催する南交流センターグラウンドは静岡産業大学のすぐ近く。静岡SSUアスレジーナのクラブハウスと練習グラウンドの目の前にあります。

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磐田市南交流センター センター長 吉添繁雄さん (※撮影時にマスクを取りました。)

「1回に4〜5人ずつ選手が来てくれます。年に2回のイベントのときは全選手が集まってくれます。本田美登里監督も来てくれますよ。」
そう話すセンター長の吉添繁雄さんは、分厚いアルバムを見せてくれました。そこには、第1回から現在に至るまでの写真が納められています。どの回にも静岡SSUアスレジーナの選手が写っています。吉添さんは、静岡SSUアスレジーナと共に「みんなでラジオ体操」を続けてきました。土曜日・日曜日の早朝6時30分からラジオ体操をし、昼には静岡SSUアスレジーナを応援するために試合会場に向かいます。
「はじめは、私1人で応援に行っていたけど、だんだん行く人が増えてきて。今は5〜6人......多いときは10数人で行きますね。ラジオ体操のときにみんなで着ているお揃いのTシャツで行くこともあります」

「みんなでラジオ体操」では、アスレジーナ静岡SSUアスレジーナの選手が、直近の試合の結果をビール瓶ケースの上に乗って報告します。勝てば「よくやった」とみんなで喜び、負ければ「次は頑張ろう」とみんなが励ます。それが週末の日課になっていました。

「僕はサッカーが分からない。点が入ったかどうかしか分からないし......でも昇格を争っているときは力が入るね」という吉添さんは、静岡SSUアスレジーナのなでしこリーグ1部昇格を熱望しています。なでしこリーグ1部昇格で、磐田市民の女子サッカーを見る目を変えたいと思っています。
「磐田市全体は『スポーツのまち』で、サッカーはジュビロ磐田が有名ですが、男子のサッカーだけじゃなくて女子のサッカーでも『サッカーのまち』として有名になってほしいです。まず、なでしこリーグ1部リーグに昇格して活躍してほしいです。今年は惜しかった」

「アスレジーナの存在は家族みたいなもの。『みんなでラジオ体操』に来ている人たちもこの子たちが頑張っていたら励みになる」と言う吉添さん。磐田市南地区のみなさんは、ラジオ体操を通じて、家族のように静岡SSUアスレジーナを応援しています。

男女平等の戦いに驚いた
ミュージシャン ヤナギアオさん

磐田市はオートバイのまちとしても知られています。磐田市と関係が深い、隣の浜松市は楽器産業が盛んで音楽のまちとして知られています。浜松市の人口は磐田市の約4倍の約80万人。浜松市内には静岡SSUアスレジーナを支援する方が多く、静岡SSUアスレジーナは浜松市内でもホームゲームを開催します。

静岡SSUアスレジーナ・オリジナル応援ソング「SPECTACLE」を歌うのは、浜松市内で音楽活動をするヤナギアオさんです。3人目の訪問は、場所を磐田市から浜松市内のスタジオに移します。

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ミュージシャン ヤナギアオさん(※撮影時にマスクを取りました。)

「浜松市と磐田市では距離がある感じがしないですよ。一緒というか、同じエリアとして生活していると思っているので、あまり違いを感じたことはないですね」
女子サッカーを観戦したことがなかったヤナギさんは、静岡SSUアスレジーナ・オリジナル応援ソングを担当することをきっかけに練習と試合を見にいきました。
「正直、サッカーには男性のイメージがありました。連れて行ってくださった方に『男性と女性で試合時間やピッチのサイズに違いがありますよね?』と聞いたら『サッカーの世界では男女平等だから試合時間もピッチの広さも一緒だよ』とうかがいました。そういうところで静岡SSUアスレジーナは戦いをされているんだ、かっこいいなと思いました」

ヤナギさんは、静岡SSUアスレジーナと接点を持つことで「女性を魅了する女性」の存在を知りました。とにかく、初めて見たときから、静岡SSUアスレジーナの選手が魅力的だったそうです。
「今は、普通に静岡SSUアスレジーナの皆さんのファンです(笑)。めちゃめちゃ選手のSNSとかチェックしているので(笑)」

静岡SSUアスレジーナ・オリジナル応援ソングがきっかけで静岡SSUアスレジーナのスポンサー企業のCMソングを担当することが決まったというヤナギさんは、さらに高みを目指して前に進んでいます。当初は、選手の前で静岡SSUアスレジーナ・オリジナル応援ソングを歌う際にとても緊張したとのことですが、今はライヴで「勝手にチームの一員だと思っているので」と笑って自己アピールしているそうです。

今回は静岡SSUアスレジーナのホームタウン・静岡県磐田市と浜松市の皆さんを訪ねました。

Text by 石井和裕

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