スフィーダ世田谷FCはブラインドフットボール(サッカー)チームを立ち上げました。現在は男女の混合チームでプレーしていますが、近いうちに日本で初めての女性選手のみのチームを結成し、リーグ戦に参入することを目指しています。
パラリンピックでのブラインドフットボールは視覚障がい(男子、全盲)選手がプレーし、フィールドプレーヤー4人はアイマスクを装着。転がると音の鳴るボールをドリブルやパスでゴールまで運び得点を競います。女子ブラインドフットボールはパラリンピック競技ではありません。スフィーダ世田谷FCは女子ブラインドフットボールをパラリンピック実施競技とするべく、日本での女子選手育成に力を入れています。そして、ブラインドフットボールを女子サッカーとは別の競技と位置付け、普及に努め、小学生から大人までのあらゆる年代の選手がトップレベルで活躍することを目標としています。
アイマスクを装着してプレーするブラインドフットボール
スフィーダ世田谷FCの地域活動に、ブラインドフットボールチームを指名したオファーが届くことが増えました。スフィーダ世田谷FC グラスルーツ推進部の加藤富美江さんは、地域がこのチームの存在を求めていると感じています。
「幼稚園、保育園、小学校からの問い合わせが多いです。『目の見えない世界』を知ること、『視覚障がい者でもできるスポーツ』に触れることを目的に、いろいろなところに呼んでいただいています」
ブラインドサッカー体験会を開催すると、参加者は「実は障がい者が身近な存在」ということに気づきます。社会の中で障がい者と一緒に生活することを当たり前だと感じてもらうことにつながります。
ブラインドサッカーの体験会
ブラインドフットボールチームの一員である稲田宗行さんはプロのミュージシャンでした。自らの視覚障がいが進む中、スフィーダ世田谷FCで2022年末からブラインドフットボールに挑戦するようになりました。持ち前の表現力を活かし「見えない世界を体験してもらう絵本読み聞かせ」とブラインドサッカーの体験会でインストラクターもしています。
「目が見えるときはバスケットボールをプレーしていました。球技がすごく好きで、ブラインドサッカーもやってみたいと思っていました。(体験会では)視覚障害とはどのような状態なのかを感じてほしいです。子どもの頃から視覚障害者と遊ぶことで『視覚障害があっても、こんなことができる』『見えていないのに、このおじさん何でもできるんだー。』と思わせたいです」
ブラインドサッカーの体験会
「障がい者は困っているからこうしなさい」という学びは学校の授業でも得られます。ただ、ブラインドサッカー体験会では生きた経験をすることが可能です。スポーツを通して、障がい者にできること、できないことを具体的に感じることで、障がい者に自然と手を差し伸べてくれる子どもが一人でも多く育つことをスフィーダ世田谷FCの関係者は願っています。そして、対象年齢の幅と身体機能の幅の両軸を広げ、すべての人が健康でスポーツを楽しめる環境づくりに取り組んでいます。スフィーダ世田谷FCのアカデミーのご案内には「ユース」「ジュニアユース」「U-12サッカースクール」「ママさんチーム」「ブラインドフットボール」「ウォーキング・フットボール体験会」の6種類のメニューが並びたくさんの人がスポーツを楽しんでいます。
現在は、性別に関わらず、また健常者もプレーしているスフィーダ世田谷FCブラインドフットボールチームですが、女性のゴールキーパーが加われば女子ブラインドフットボールとして全てのポジションに人材が揃います。
Text by 石井和裕