連載コラム

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2023年09月22日

なでしこリーグのSDGs もう一つのゴール 伊賀FCくノ一三重編

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高齢者の健康維持について、さまざまな対策が生まれています。その手法の一つとして「買い物リハビリ」という単語が注目を集めています。高齢者が売り場を歩くことで身体機能を回復したり認知機能を改善したりする報告が共有されているそうです。

そのような研究を意識することなく、地域の高齢者のために、ごく自然に始まっていた買い物イベントがあります。それが「わたせい『いきいきお買い物サポートプロジェクト』」です。2023年7月26日には、伊賀市内の介護施設に入居しているおじいちゃん・おばあちゃんをわたせい小田店にご招待し、伊賀FCくノ一三重の選手5人が一緒に買い物をしました。わたせいは衣類・寝具・雑貨などを販売する総合衣料品店。8店舗を三重県内で展開しています。

長くコロナ禍により外出することすらできなかったおじいちゃん・おばあちゃんにとって、この日は久しぶりの買い物になりました。しかも、購入するのは日用品ではなく衣料品。みなさん、とても楽しみにしていたそうです。

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ファッションの話で意気投合

坂本紗椰さんはわたせいで働き始めて5年目。このプロジェクトのリーダーです。「介護施設などに入居されている高齢者さんや、思うように買い物に行けない方たちに、わたせいでゆっくりお買い物を楽しんでもらいたい」と思い、この取り組みを進めてきました。伊賀FCくノ一三重の選手が参加するのは今回が初めて。準備段階では不安があったと言います。しかし、お店を1時間貸し切って、マンツーマンでおじいちゃん・おばあちゃんと一緒に買い物をする選手たちの姿を見て、すぐに安心しました。

「スポーツ選手は、自分から遠く離れたテレビの向こう側の人たちだと思っていました。でも、この日は伊賀FCくノ一三重の選手が目の前にいて、かっこいい姿を見ることができたので『私達も頑張ろう』と背中を押された気持ちになりました」

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一緒に商品を選ぶ

常田麻友選手は参加選手の一人です。おじいちゃん・おばあちゃんに、ここまで喜んでもらえるとは思っていませんでした。

「最初は、ちょっとよそよそしい感じがありましたが、お互いに好きな服について会話をしていくうちに打ち解けてもらい、だんだん買い物に興奮されていくのがわかりました。その笑顔と『本当に楽しかった』と言ってもらったことが嬉しかったです」

わたせい(株式会社 綿清商店)代表取締役社長の曽我江里子さんは、買い物本来の楽しさを選手が提供してくれたと喜んでいます。

「店内でパスやリフティングを見せてもらい、皆の表情が本当に楽しそうな笑顔に変わっていきました。スポーツの影響力はすごいと思いました。団体スポーツは、目の前のチームメイトや対戦相手のことを真剣に考えて次のプレーを選択します。今回は、その対象がおじいちゃん・おばあちゃんになりましたが、本当のチームワークを見せてもらいました」

リフティング披露.jpg
店内でリフティングを披露

伊賀FCくノ一三重は1970年代から、ずっとこの地域で活動しています。常田選手は伝統あるクラブが地域コミュニティの一員として実績を積み上げてきたことを再認識しました。

「地域の方と一緒に行動すれば、できることはサッカーだけではない。改めて選手の存在意義を確認することができました」

佐々木葵選手はクラブの立ち位置にも発見があったと言います。

「今回は企業と一緒に取り組むことでSDGsへの貢献方法の幅が広がりました。地域のたくさんの企業や商店と一緒に、もっとたくさんのアクションをしていきたいです」

小さな一歩から、きっと伊賀の街は変わっていきます。

Text by 石井和裕

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