連載コラム

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2023年11月09日

なでしこリーグのSDGs もう一つのゴール 大和シルフィード編

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大和シルフィードは、2020年11月より、神奈川県が実施している「SDGs社会的インパクト評価実証事業」の実践研修に参加しています。誰でもスポーツを楽しみ持続できるというメッセージを伝えるため、LGBTQ+当事者の抱える悩みや現状に対してクラブの力を活かす方法を考え続けてきました。その姿勢を象徴しているのが毎年6月に開催しているPRIDE MATCHです。回数を重ね、すっかり恒例行事となっています。2023年は6月18日に開催。スポーツ現場におけるLGBTQ+ に関する事前研修には、トップチームの全選手が参加しました。そして、初の試みとして、スタジアム外にも活動の場を広げました。7月25日に、大和市文化創造拠点シリウスにおいて絵本の読み聞かせイベントを開催したのです。

「大和市スポーツ課の小野寺志保さん(元日本女子代表)を通じて、大和シルフィードから『シリウス内の図書館と連携したイベントを行い地域貢献につなげたい』というお話をいただきました」

経緯を話してくださったのは大和市文化創造拠点シリウスにある大和市立図書館スタッフの中村景子さんです。大和市文化創造拠点シリウスでは、以前よりSDGsをテーマとした取り組みを行なっており、大和シルフィードからの提案は大歓迎でした。

イベントタイトルは『大和シルフィードの選手がシリウスにやってくる!!』となりました。予約は不要とし、当日に来館された方が気軽に参加できるようにしました。濱本まりん選手は『ノンタン』、北方沙映選手は『こんとあき』の読み聞かせを行いました。

北方選手は読み聞かせイベントに初めて参加しました。

「すごく楽しかったです。子どもたちの多くは『面白いことをやっている』と思って会場に入って来てくれました」

中村さんは「選手と子どもたちの交流が想定していたよりも活発に行われていた」と感じました。最後に読み聞かせを行ったのは下山田志帆選手です。絵本『みんなのいろいろ』をゆっくりと読みました。男女を前提とした世の中がマイノリティの人々にどのように見えているかを想像し、知るきっかけを与えてくれる物語です。下山田選手はエグゼクティブアドバイザーとして、この絵本の制作に参加しています。

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子どもたちと一緒に塗り絵をする下山田志帆選手

絵本『みんなのいろいろ』の巻末には塗り絵のページがあります。読み聞かせが終わると、子どもたちは自由に色を塗り始めました。濱本選手は塗り絵を楽しむ様子に、このイベントを開催する意義が詰まっていたと感じました。

「黙々と塗る子、初めて会った子同士で話しながら塗る子、いろいろな塗り方がありました。線の描き方も、絵も独特で面白かったですね。自分が小学生のときは、人に見られないようにコソコソ描いていたと思います。でも、今回は、絵本『みんなのいろいろ』の読み聞かせの後だったので、誰もが堂々と好きなように描いていました。全員が『見て!見て!』とアピールし、とても良い雰囲気でした」

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発想の豊かさに刺激を受けた濱本まりん選手

北方選手は、子どもたち各々の自由な発想が印象に残っています。

「どのような塗り方をしても否定せず『いろいろな人がいる』ということを伝えられました。自分と違う考えの人を『普通じゃない』と捉えるのではなく『それ、面白いね』と言い合える良いイベントになりました」

大和シルフィードは、いずれ、多くの人に「アライ・クラブ」(※)と呼んでもらえる日が来ることを信じて、スタジアム内外で活動を続けています。

※アライ(ally):「ally」は「盟友、味方、同盟者」といった意味で、LGBTQの文脈では、LGBTQ当事者ではないが、LGBTQの活動を支持し、協働していく人のことを指すことが多い。

Text by 石井和裕

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