連載コラム

このページを共有する
  • ツイートする
  • シェアする
  • ブックマーク
  • LINEで送る

2021年11月16日

なでしこリーグの歴史を知ろう 第16回「タイトルスポンサー」

日本で女性がサッカーをプレーすることが珍しかった時代から、女子サッカーリーグ開幕、女子ワールドカップ優勝、女子プロサッカーリーグ創設、また、女子サッカーを取り巻く環境、そして社会情勢は大きく変化してきました。
年内にかけて全22回の連載を予定しています。激動の日本女子サッカーの歴史を振り返ります。
(毎週水曜更新)

(★確定)JFA08113_038.jpg
プレナスなでしこリーグ2008 開幕会見@JFAハウス(2008/4/8)

 2004年アテネ・オリンピックでの「なでしこジャパン」の活躍により、女子サッカーというものが日本でも広く認知され、「なでしこリーグ」にも追い風となります。それが最もはっきり出たのが、2006年の「リーグタイトルスポンサー」との契約でした。
 この年の4月17日、リーグは都内のイベントホールで新シーズンの記者発表会を実施、外食・ブライダル・ライフスタイルなどの事業を展開する「株式会社モック」とオフィシャルスポンサー契約を結んだことを発表しました。これにより、リーグの愛称は「mocなでしこリーグ」となりました。
 イングランドの男子プレミアリーグには1990年代から「タイトルスポンサー」がついていましたが、日本のサッカーでは、年間を通じてのリーグにこうしたものがつくことはありませんでした。Jリーグでも、初めてタイトルスポンサーがついたのは2015年のことでした。それだけに、「mocなでしこリーグ」は大きな注目を集めました。
 クラブではなく、リーグ自体に大きなスポンサーがつくことは、リーグの活動を活性化し、試合の華やかさを増し、ひいては試合のエンターテイメント性を高めます。
 株式会社モックからは、その事業にふさわしく、チャンピオンチームに時価1億円といわれる「ティアラ」の戴冠も発表されました。さらに、試合は一部有料化され、いくつかのクラブでプロ選手が登録されるなど、リーグをより華やかなものにして「興業」としての価値を高めようという動きが活発になりました。
 なでしこリーグのクラブの運営を通じて大きな収益が出るわけではありません。しかしなでしこリーグが人びとの注目を集めるものになれば、少女たちに夢を与え、日本の女子サッカーをより活発なものにしていく大きな力になります。
 記者発表会に出席した日本サッカー協会の川淵三郎キャプテン(会長)は、「これを契機に日本の女子サッカー界が大きく発展していくことを確信している」と、力強い言葉で新スポンサーへの感謝を語りました。
 豊富な資金を得て、2007年には8年ぶりに「リーグカップ」が「mocなでしこリーグカップ」として再開されます。この大会は当時の「L・リーグ」にチームを送り込んでいた「沖電気工業株式会社」の協賛を得て、「OKI Lリーグカップ」として1996年から3シーズン開催、タイトルスポンサーがなくなった1999年にも4回目の大会を開催しましたが、2000年からは中断されていました。リーグとともにリーグカップを開催することは、各クラブの試合数を増やし、若手を育成するのにとても大切なことです。
 株式会社モックとの契約は2008年までの3年間の予定でしたが、会社が急激な業績不振に陥ったため、2007年までの2年間で打ち切りになります。しかし2008年4月には「株式会社プレナス」が新しいタイトルスポンサーとして発表されます。
 日本全国に「ほっともっと」や「やよい軒」といった外食チェーンを展開する企業。「女性がより活躍できる社会の実現に向け、世の中のがんばる女性たちを応援したい」というこの企業の理念が、なでしこリーグのイメージと重なったのです。
 リーグは2008年から「plenusなでしこリーグ」、2010年以降は「プレナスなでしこリーグ」という愛称になります。そして株式会社プレナスはことし誕生した「WEリーグ」のスポンサーになるとともに、なでしこリーグでも引き続き「トップパートナー」としてリーグの最大の「サポーター」になってくれています。
 リーグにこうした「パートナー」がいてくれるのは、けっして当たり前のことではありません。長年にわたり、資金面・精神面で多大な応援をしてくれているのは、何よりも、なでしこリーグの選手たちが、「なでしこらしく」心と力をひとつにし、いつもフェアに、力を出し尽くしてプレーしているからだということを、けっして忘れてはいけないと思うのです。

文=大住良之(サッカージャーナリスト)
写真=Jリーグ

(つづく)

このページを共有する
  • ツイートする
  • シェアする
  • ブックマーク
  • LINEで送る