小田急線の祖師ヶ谷大蔵の駅から南に下ると「ウルトラマン商店街」の一つ「祖師谷みなみ商店街」があります。この道をまっすぐに進むとスフィーダ世田谷FCの事務所があります。さらに、まっすぐ進んだ、現在のサミットストア成城店の近くに、かつては円谷プロがありました。今回は、スフィーダ世田谷FCのホームタウン、東京都世田谷区を訪ねます。
「ウルトラマン商店街」にたたずむカネゴン
商店街のお店も一緒に強くなりたい
祖師谷みなみ商店街 理事長 小島孝さん
「ウルトラマン商店街」は祖師谷みなみ商店街振興組合、祖師谷商店街振興組合、祖師谷昇進会商店街振興組合の総称です。スフィーダ世田谷FCは、この街の3つの商店街をはじめとする、世田谷区の皆さんと共に歩んできました。
祖師谷みなみ商店街 理事長 小島孝さん
「スフィーダ世田谷FCは地域の仲間という感じです。選手の皆さんは気さくで、人懐こい人が多いですね」
商店街は多業種の集まり。人のつながりを大切にしています。
「コロナ以前は、選手の皆さんがユニフォームを着て商店街を訪ねてくださって、一緒に楽しくやっていましたよ。機会があれば、また復活してほしいですね。1部リーグに昇格して、いきなり2位になったので、次は優勝ですね。お店も一緒に強くなりたいです。それに、なでしこジャパン(日本女子代表)に選手を輩出してほしいです」
なでしこリーグ1部での活躍により「ウルトラマン商店街」の皆さんの期待は大きく膨らみます。
祖師谷みなみ商店街に設置された2021プレナスなでしこリーグ1部2位の横断幕
一人のサポーターとして応援しています
サミット株式会社 代表取締役社長 服部哲也さん
サミットストア成城店(グロサリー)で働く堀江美月選手「社長は優しくて面白い方です。昨年の2020プレナスなでしこリーグ2部優勝の祝勝会でコントをしてくれました。社長室にはスフィーダへの愛がありますね」
サミットストア成城店 堀江美月選手
サミットストア砧店で働く中山さつき選手(ベーカリー)「社長や店長が応援してくださるおかげで、店全体が応援してくださっている感じです。試合会場にも熱心に足を運んでくださるので、会社の社長であることはもちろんなのですが、私たちの強いサポーターです」
村上真生選手(グロサリー)「社長はサッカーが大好きな方です。社長室には歴代の選手のユニフォームや旗、グッズが飾ってあり、スフィーダのことを応援してくださっていることが伝わります」
サミットストア砧店 村上真生選手(左)、中山さつき選手(右)
「写真は私の部屋(社長室)で撮影した方が良いですよ」
取材の冒頭に笑顔で言われました。サミット株式会社 代表取締役社長の服部哲也さんはスポンサー企業の社長というよりも「熱狂的なサポーター」という表現が相応しい熱い人でした。
サミット株式会社 代表取締役社長 服部哲也さん(社長室にて)
サミットは1963年10月に食品スーパーマーケットの1号店を東京都世田谷区野沢に開店。スフィーダ世田谷FCのホームタウン・世田谷区は発祥の地といえます。現在、世田谷区内に17店舗を展開しています。
「昔からあるものを大切にしながら新しいものを取り入れる気質」それが、服部さんのイメージする世田谷区。都心から適度な距離があり生活しやすいエリアです。昔から長く住んでいる人と転居してきた若者が融合し、独特の文化を作っています。
サミットは、なぜ、スフィーダ世田谷FCを応援するようになったのでしょう。
「お客様とはレジを挟んで向かい合う関係、お取引先とは商談カウンターを挟んで向かい合う関係。だから、みんなで一緒に同じ方向を向いて盛り上がれるものがあると良いね」という発想からスフィーダ世田谷FCを応援するようになりました」
サミットでは多くの選手が働いています。戦力としての存在以上の良い影響が雇用選手にはあるといいます。
「サミットで働く人は、みんな個性を持っています。その個性を埋没させるのではなく、少しでも生かして良いお店にしようとしています。店頭で働く選手は、地域の皆さんにとって身近で、応援したくなる存在になっていると思います。そして、自分らしさを店頭で出していると思います。その姿を見ていると、同じ職場で働くみなさんも、一緒に、お店を作っていく個性が出てくると思います。一人一人が、ちょっとずつでも楽しんで働いてくれると、お客様に与えるお店の印象は変わりますね」
ところで、先程の写真の社長室の壁面やテーブルの上でわかるように、服部さんは、人並外れた熱意でスフィーダ世田谷FCを応援しています。どのようなスタジアムを夢見ているのでしょう。
「勝とうが負けようが、スフィーダ世田谷FCの試合がある日は、地域の皆さんがスタジアムに足を運ぶ習慣になると良いですね。スタジアムの周囲の出来事も含めて楽しむ日課になると良いと思います」
そんなスタジアムの風景を、どこかで見た覚えがあります。そう、川崎フロンターレのホームスタジアムである等々力陸上競技場です。
「実は、私はフロンターレ育ちです。いつも、川崎フロンターレ(等々力陸上競技場)のコアサポーターが集まるGゾーンでJリーグを見ているので、席に座って試合を見ていられないタイプです(笑)。私は、いわゆる応援団(コアサポーター)がいる場所でスフィーダ世田谷FCの試合を見ています。横断幕の撤収も一緒にやっています。最初に応援に行ったときは『スポンサーであるとか関係なく、一人のサポーターとして応援するのでよろしくね』と自己紹介しました。」
ここまでのお話も、社長室のグッズの山も壁面も、この一言で全て納得できました。
「もっと世田谷区の人たちに愛される存在になってほしいです。そのために、お店は協力していきます。他のスポンサー企業や商店街とも話をしながら、みんなで盛り上げていけたらと思っています。世田谷区民の皆さんがスフィーダ世田谷FCの応援団になって、チケットの入手が困難にまでなると良いと思います」
もしかすると、次の試合、服部さんは、あなたの隣の席で熱く応援しているかもしれません。
女子の試合もすごいんだぞ
トップビジネス印刷株式会社 管理部 部長 石橋敦さん
石橋敦さんは、祖師ヶ谷大蔵から近い喜多見の出身。スフィーダ世田谷FCのエンブレムが変わる頃(2018年)に印刷のお仕事を受注するところからお付き合いがスタートしました。その後、いつの間にか販売用のグッズ製作も始まり、さらには、イベントのお手伝いもするようになりました。
「グッズ製作では利益は出ませんよ。でも、コミュニティは広がります」
石橋さんは笑顔で語り始めました。本来は、印刷したグッズを納品してお仕事は終わりのはずですが、石橋さんは試合会場に足を運びます。スタッフパスを首から下げ、グッズ売り場を自ら作り、現場に立つのです。
トップビジネス印刷株式会社 管理部 部長 石橋敦さん
「お客様の声を反映したグッズを作りたいです。現場に行くと、お客様から『こういうものが欲しい』というご要望をいただけます。そうしたご意見を形にしたいです。グッズ売り場を楽しいお祭りにしたいですね」
石橋さんは「全力で走る選手の姿に最も感動する」といいます。「女子の試合もすごいんだぞ」という迫力を子どもたちに見せたいと言います。そんな石橋さんは、グッズ売り場に立つ、その傍らで、運営ボランティアのサポートまでしています。その全力疾走のような行動力の源泉はどこにあるのでしょうか。
「ボランティアを含む運営現場はチームです。スタジアムを、お客様にとって『いるだけで安心の体制』にしたいです。自分は印刷の仕事をしているので、ものづくりは楽しいです。最終的には自分が楽しい......というのが、ここまで続けられている秘訣ですね」
日本映画史に数々の栄光を刻み込んだ円谷プロは、2011年に世田谷区から渋谷区へ移転しました。しかし、世田谷区を去っても多数の記念のモニュメントを商店街に残しています。これから、スフィーダ世田谷FCが栄光を手にした暁には「世田谷の熱いサッカーチーム」として、この地に、栄光の記録を刻み込んでほしいと思います。
今回はスフィーダ世田谷FCのホームタウン・東京都世田谷区の皆さんを訪ねました。
Text by 石井和裕