連載コラム

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2022年02月10日

日本全国なでしこリーグの街を訪ねて バニーズ群馬FCホワイトスター編

バニーズ群馬FCホワイトスターは2007年に発足しました。2016年に、群馬FCホワイトスターとしてなでしこリーグを目指し本格的にチームを強化。群馬県リーグから関東リーグ、そしてついに2021年シーズンから、なでしこリーグ2部に参入。2021プレナスなでしこリーグ2部を2位で勝ち抜き出場を決めた2021プレナスなでしこリーグ1部・2部入替戦を勝利。2022年シーズンは戦いの舞台をなでしこリーグ1部に移します。待望の1部リーグ昇格で、前橋市民の注目が集まり始めています。

今回は、バニーズ群馬FCホワイトスターのホームタウンである群馬県前橋市を訪れます。

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前橋市

前橋市にチームがある喜び
前橋市長 山本龍さん

群馬県前橋市はスポーツが盛んです。最も有名なのは自転車です。まえばし赤城山ヒルクライム大会という日本有数のヒルクライム大会を開催し約3,700人が参加。開催日の前橋市はサイクルマニアでいっぱいになります。

そんな前橋市は「MAEBASHI PRIDE スポーツを応援できる幸せ。」を合言葉に、前橋市を拠点とするスポーツクラブを通じたシティプロモーションを行っています。前橋市では、バニーズ群馬FCホワイトスターのほか、ザスパクサツ群馬(サッカー)、群馬ダイヤモンドペガサス(野球)、群馬グリフィン・レーシングチーム(自転車)、群馬銀行グリーンウイングス(バレーボール)の5クラブが活動しています。

前橋市はこの5クラブを支援するため、クラブと協力してふるさと納税を募っているのです。大手ポータルサイトのほか、スポーツに特化したふるさと納税を扱う「ふるスポ!」とも連携しています。

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前橋市長 山本龍さん (※撮影時にマスクを取りました。)

「トップリーグのスポーツを応援するのは、前橋市の大きな取り組みの一つです」と、前橋市長の山本龍さん。バニーズ群馬FCホワイトスターのなでしこリーグ1部昇格について聞いてみると「よく頑張られたよね」と目を細めます。なでしこリーグ1部昇格を目指して戦ってきたバニーズ群馬FCホワイトスターの応援は、前橋市民の団結や郷土愛を生むものだと考えています。

「頑張るチームと応援する市民を結びつけるのが市役所ですからね」

スポーツは、市民生活を豊かにするだけではなく、前橋市の観光・産業の活性化にもつながる存在と捉えられているのです。山本市長は、前橋市内外の人々の交流が、バニーズ群馬FCホワイトスターを通して拡大することを願っています。

「市民の楽しみを増やすってことですね。市民の誇りとかね......これがだんだんと隅々にまで届いて、前橋市内の高校に女子サッカー部ができたりすると良いよね」

ボールを繋ぎコミュニケーションが生まれる
群馬大学3年生 竹内陽香さん

山本市長とのお話の中にバニーズ群馬FCホワイトスターの社会貢献活動の話題がありました。さまざまな活動に「積極的に参加されているのがありがたい」とのこと。次にご紹介するのは知的障がい者サッカーチームとの交流です。

TSUBASA FCは特別支援学校卒業生等を支援する会『ひまわり会』のサッカーチームです。18才から40才の知的障がいを持つ社会人を中心に構成し、その運営は選手たちの代表からなる選手役員会、学生ボランティアスタッフ、サポーターズクラブ(保護者会)が行なっています。群馬大学の学生が一年ごとに交代で監督を務めます。

バニーズ群馬FCホワイトスターは、長年、TSUBASA FCとの交流を続けてきました。毎年、秋に「バニーズ群馬FCホワイトスター・TSUBASA FC 交流会『スマイルエイド』」を開催しているのです。そして、夏に開催される『ファイトカップ群馬知的障害者サッカー大会』に、バニーズ群馬FCホワイトスターの選手、監督、スタッフがボランティアで参加しています。

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竹内陽香さん (※撮影時にマスクを取りました。)

2021年シーズンにTSUBASA FCの監督を務めたのは竹内陽香(はるか)さん。群馬大学で障がい児教育を学ぶ3年生です。TSUBASA FCとバニーズ群馬FCホワイトスター、2つのチームを繋ぐのは、やはりボールだそうです。
「知的障がいと聞くと、専門的な知識や経験が必要だと考える方が多いと思うのですが、バニーズ群馬FCホワイトスターの選手の皆さんは、声をかけながら気さくにサッカーボールを繋ぐことで、壁を感じることなくコミュニケーションをとってくださいます」

2つのチームの交流は、バニーズ群馬FCホワイトスターからの一方的な支援ではありません。逆に、TSUBASA FCの選手、スタッフが、年に一度、バニーズ群馬FCホワイトスターの公式戦の運営ボランティア(会場設営)を行なっているのです。
「バナーの杭を打ったりして、試合の準備をしています。試合中はスタンドからの応援にも参加させていただきます。TSUBASA FCの選手は、いつも、この日を楽しみにしています。
知的障がい者は社会的弱者というイメージが強いです。でも、こうして活動することで、知的障がいがあっても、このように社会に参加できるということをいろいろな方に知っていただく機会が生まれます。TSUBASA FCの選手は、バニーズ群馬FCホワイトスターの役に立てた成功体験で自信がつきます。その自信を、これから、さらなる社会参加に活かしていければと思います」
バニーズ群馬FCホワイトスターの選手たちはTSUBASA FCの応援を心強く感じています。2021年シーズンのキャプテンを務めた相沢優里選手は「子どものころからの『サッカーが楽しい!』という感覚を、改めてTSUBASA FC の選手たちと一緒に実感できました」と感謝の気持ちを示しています。

竹内さんはこうした交流によって、知的障がいのある人々が地域を支える光になり、バニーズ群馬FCホワイトスターの選手を元気付けていることが素晴らしいと感じています。

群馬県の若い力が伸びてほしい
群馬トヨペット株式会社 代表取締役社長 大山駿作さん

群馬トヨペット株式会社 代表取締役社長の大山駿作さんは、バニーズ群馬FCホワイトスターを設立直後から応援してきました。
「(アカデミーで)小さな頃からプレーしている選手が、力をつけて県外に巣立っていく。サッカーの実力をつける場としてバニーズ群馬FCホワイトスターの存在価値があると思います。指導者は、地道に活動を続けていらっしゃいます。巣立った後に(日本サッカーの)中央で活躍した選手が、また、群馬に戻ってきてくれると良いですね」
そのようにお話しされる大山さんの脇には、AAC高崎ホワイトスター(当時)から巣立ち、FCR2001デュースブルクやなでしこジャパン(日本女子代表)でプレーした大矢歩選手の写真が飾られていました。大矢選手は、この取材の直後にバニーズ群馬FCホワイトスターへの復帰を発表。きっと、大山さんは、嬉しかったことでしょう。

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群馬トヨペット株式会社 代表取締役社長 大山駿作さん

群馬トヨペット株式会社は、環境保全・緑化活動をはじめ、地域に密着した社会貢献活動を幅広く展開しています。そして、バニーズ群馬FCホワイトスターの社会貢献活動に賛同し『群馬トヨペットプレゼンツ バニーズ群馬FCホワイトスターサッカー教室』に協賛しています。

「ただ、土日にお客様がいらっしゃる職場なので、従業員がイベントや試合の応援にまとまって行くことができないのです」

そこで、大山さんや群馬トヨペット株式会社の従業員は、違う方法で選手にエールを送ります。その一つが、フットサルによる交流。職場のフットサル好きが集まって作ったチームが選手たちと試合をします。

「(従業員の)年齢が上がってくると動けなくなるんだよ。最近は、全く勝てない」

勝ち負けはさておき、試合を重ねるごとに会話が生まれ、応援する気持ちを選手に伝えてきました。

そして、もう一つはGP-Fesです。群馬トヨペット株式会社では社員同士のコミュニケーションを深める運動会イベント・GP-Fesを毎年開催しています(2020年以降はコロナ禍により中止)。約600人が参加するこのイベントに、バニーズ群馬FCホワイトスターの選手も参加し、リレーや運動を楽しんでいます。

「選手は真剣に走ってくれますよ、怪我するんじゃないかって心配になるくらい(笑)」

大山さんは、群馬県内の多くの人、多くの企業からの応援が集まってほしいと思っています。その輪が大きくなればなるほどクラブの力は強くなる。活躍する選手が増えれば、次に、その選手を目指す若い世代が増えてくる。群馬県の女子サッカーの未来につながる好循環を期待しています。

「『全国で、ずいぶんと群馬出身の選手が活躍しているよ』という状況になるのも良いことじゃないですかね」

バニーズ群馬FCホワイトスターが地域の絆を紡ぐ存在に育っていくことを、大山さんは楽しみにしています。

今回はバニーズ群馬FCホワイトスターのホームタウン・群馬県前橋市の皆さんを訪ねました。

Text by 石井和裕

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