連載コラム

このページを共有する
  • ツイートする
  • シェアする
  • ブックマーク
  • LINEで送る

2021年11月03日

なでしこリーグの歴史を知ろう 第14回「新たな取り組み」

日本で女性がサッカーをプレーすることが珍しかった時代から、女子サッカーリーグ開幕、女子ワールドカップ優勝、女子プロサッカーリーグ創設、また、女子サッカーを取り巻く環境、そして社会情勢は大きく変化してきました。
年内にかけて全22回の連載を予定しています。激動の日本女子サッカーの歴史を振り返ります。
(毎週水曜更新)

mareeze_beleza1.jpg
Lリーグ2005 L1 第20節 日テレ・ベレーザvs東京電力女子サッカー部マリーゼ@西が丘サッカー場(2005/10/30)

「なでしこジャパン」の愛称が日本中の人びとに知られるようになった2004年、日本の女子サッカーは新しい発展の時期を迎えます。1994年から「L・リーグ」の愛称で親しまれてきた「日本女子サッカーリーグ」も、なでしこジャパンを支え、世界に羽ばたく日本の女子サッカーをリードしていこうと、この年の9月にその愛称を「なでしこリーグ」と改めます。そしてこのチャンスを逃してはならないと、果敢な取り組みが行われていきます。
 迎えた2005年、リーグはシーズン開幕に先駆けて「なでしこスーパーカップ」を開催します。前年のリーグ優勝チームと全日本女子選手権(現在の皇后杯)の優勝チーム同士が対戦する「開幕記念試合」。男子の「ゼロックス・スーパーカップ」(Jリーグ優勝チーム対天皇杯優勝チーム)にならったものですが、新しいシーズンに話題を提供し、前年以上に盛り上げようという意欲的な試合でした。
 4月3日、さいたま市の浦和駒場スタジアムは穏やかな好天に恵まれました。JFA名誉総裁の高円宮妃久子殿下が試合前に激励した両チームは、「浦和レッズレディース」と「日テレ・ベレーザ」。2004年のなでしこリーグ優勝は「さいたまレイナスFC」だったのですが、新シーズンを前に、Jリーグの浦和レッズに移管され、この試合が初の公式戦でした。
 試合はそのレッズが奮闘。澤穂希や永里優季といったリーグを代表するアタッカー陣を要するベレーザの攻撃を鋭い出足で封じ、前半34分、後半20分と得点、2-0とリードを奪います。しかし女王の座奪還に燃えるベレーザはあきらめず、2点目を失った直後の後半22分に大野忍が1点を返し、続けざまに26分には澤のスルーパスで抜け出した大野が決めて、あっという間に同点に追いつきます。そして2-2の同点でPK戦にはいると、ベレーザのGK小野寺志保が活躍、5-3で勝利をつかみます。息詰まる熱戦に、2948人がはいった観客席は大いに沸きました。
 この年のリーグは、1部(まだ「L1」と呼んでいました)が8クラブ、2部(L2)が7クラブ。なでしこジャパンの日程で前年のL1では実現できなかった「3回戦総当たり」を実施、全21節と大幅に試合数が増えました。
 そして6月には、注目のカードのひとつである「ベレーザ対レッズ」が、試験的に有料試合とされました。
 L・リーグ時代には入場料を取って試合を開催していたのですが、リーグ運営が危機に立たされた2000年のシーズンから、試合はすべて無料になり、スタジアムではなくても、たとえば練習グラウンドのような施設で開催してもいいことになっていたのです。しかしリーグに再び注目が集まるようになって「スタジアム」が必須になり、また、有料試合を復活させることにしたのです。
 試合が行われたのは6月26日。茨城県のひたちなか市総合運動公園という、対戦した両チームのファンにとっては少し遠い会場でしたが、それでも1095人ものファンが入場料(前売り700円、当日売り800円、小学生以下は無料)を払って見に来てくれたことは、リーグ関係者を強く勇気づけました。
 この2005シーズンの優勝を争ったのは、ベレーザと「TASAKIペルーレFC」。ベレーザは第20節に東京の西が丘サッカー場で「東京電力女子サッカー部マリーゼ」を迎えます。このクラブは、前年までL1で活躍していた「YKK AP東北女子サッカー部フラッパーズ」(宮城県)からチームを移管され、福島県のJヴィレッジを拠点にスタートを切ったばかりのチーム。しかしエースの丸山桂里奈を中心に、その1年目から上位に進出する活躍を見せていました。
 同じ日に伊賀FCと対戦した2位TASAKIが敗れて自らの試合前にはリーグ優勝が決まっていたベレーザでしたが、後半に澤と大野が決めて2-0で快勝、3年ぶり8度目の優勝に華を添えました。
 そしてL2では、新顔が大暴れします。この2005年にリーグに加盟したばかりの「INACレオネッサ」(兵庫県)が、なんと18戦して16勝1分け1敗、得点87、失点16という圧倒的な成績で優勝、わずか1年で日本のトップリーグであるL1への昇格を決めてしまうのです。ブラジル代表のプレチーニャがプロ契約選手としてプレー、L2最優秀選手に選ばれた米津美和とともにチームを引っぱりました。そしてINACのL2優勝は、この次にくる新しい時代への序章となるのです。

文=大住良之(サッカージャーナリスト)
写真=Jリーグ

(つづく)

このページを共有する
  • ツイートする
  • シェアする
  • ブックマーク
  • LINEで送る